関連書籍を読んでの雑感「実録 水漏れマンション殺人事件」

ネタバレにご注意ください。

この「実録 水漏れマンション殺人事件」(久川涼子著 新潮社)は,著者所有のマンション区分所有建物(5階建て29戸マンションの1階所在。当時賃借人の家族が入居)の上階(2階)で殺人事件と,その犯人が水道の栓を破壊したことによる水漏れ事故が発生したという事態に対して著者が取った対応の顛末を描いたノンフィクションものです。

警察,マンションの管理会社,管理会社お抱えの内装業者,不動産仲介業者,買取業者,著者の代理人弁護士,殺人事件の犯人の国選弁護人,民事の代理人弁護士,建築家,損害保険会社,損害保険鑑定人などの様々な当事者が登場し,ノンフィクションものとしてはなかなか骨のあるものになっています。

著者の代理人弁護士の動きとしては,殺人事件の犯人が鑑定留置(被疑者を精神鑑定のために病院等に留置する手続)を受けた場合の対処法や,著者の被った損害額の算定方法などが参考になりました。

また,マンションの管理組合も一応登場するのですが,殺人事件発生後はじめての毎月の「定例会」(理事会のことと思われます)に著者と理事会役員と管理会社の担当者以外誰も出席しなかったというのは意外でした。投資用マンションなどでも区分所有者のマンションの価値保全に対する関心がここまで低下しているのかもしれません。最終的には犯人は裁判で心神喪失の判決を受けた後措置入院を経て数年後に2階の部屋に戻ってきたようですが,犯人の立退き(区分所有法59条による犯人の居住物件の競売)を求めるような動きにはならなかったのでしょうか。

それにしても,この著者はもともと弁護士や建築家の知り合いがおり,事件発生後も親しい知り合いから弁護士や不動産業者をどんどんと紹介してもらうことができるなど,必要な人脈に極めて恵まれていたケースといえます。おかげで最後は著者なりのゴールをつかむことができました。一方,被害者の方がこうした人脈にすら恵まれていないケースだったとしたら,本件は一体どのような推移をたどったことでしょうか?

法律面含め興味の尽きない一冊となりました。

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