敷地利用権とは、専有部分を所有するための敷地に関する権利のことをいいます。所有権、地上権や土地賃借権(借地権)が敷地利用権とされることが一般的です。
敷地利用権が数人による所有権その他の権利である場合(要するに、一般的なマンションのように複数人で敷地利用権を持ち合っているような場合)には、その有する専有部分とその専有部分にかかる敷地利用権とを分離して処分することができません(区分所有法22条1項)。これを、分離処分禁止の原則といいます。この分離処分禁止の原則により、原則として専有部分の所有権が譲渡されれば当然に敷地利用権も譲渡されることになりますし、専有部分に抵当権が設定されれば、その抵当権の効力は当然に敷地利用権にも及ぶということになります。
そもそもわが国では物権法上土地と建物とはそれぞれ別個の不動産と考えられており、それぞれは別個に処分できるというのが建前です。それにもかかわらずこのような分離処分禁止の原則が認められるのは、①専有部分と敷地利用権とがそれぞれ別々の人物に譲渡されることによって敷地の管理に障害をきたすことを防止する、②マンションのような区分所有建物についてまで土地(敷地)と建物(専有部分)が別々に登記されるという状態を貫くと、登記記録が極めて複雑になってしまい、登記記録の作成に過誤が生じかねないこと、などがその理由とされています。
なお、敷地利用権は、管理規約で分離処分が可能な旨を定めた場合など一定の場合には、前述した分離処分禁止の原則にかかわらず、専有部分の所有権と分離して処分することができます。管理規約で分離処分を定める旨が許されているのは、団地型区分所有建物の初期分譲において、一部の敷地利用権を後の分譲時のために留保しておきたいというデベロッパーの要請などに配慮したものです。いわゆるタウンハウス型区分所有建物においても、管理規約に予め規定をおいて分離処分を認めている管理組合が存在するようです。こちらは組合員の数が比較的少ないという条件の元でのみ成り立ちそうです。