国土交通省の定めるマンション標準管理規約は、マンション管理規約のひな形です。法的拘束力こそありませんが、新しく竣工するマンションでは多くの場合その内容が取り入れられるなど、マンション管理の実務に与える影響は少なくありません。
このマンション標準管理規約についてこのほど5年ぶり5回目の改正が行われました。
今回の主な改正点の一つとして管理組合の運営目的からコミュニティ条項(管理組合内のコミュニティの維持)が削除されました。これについては「今後マンション内のお祭りに管理費を拠出するのはダメ」などとマスコミの報道があった通りです。
もっとも、より注目すべきはマスコミではむしろほとんど報道されることがなかった管理組合理事会の役員資格についての大幅な改正でしょう。今までは管理組合内の自治を重んじる観点から役員資格はマンション内に現に居住する組合員に限られていましたが、今回の改正では管理組合内の高齢化、不在化、不祥事の増加等の事態に正面から向かい合う必要性から、(マンション管理士や弁護士といった)外部の専門家に役員資格が認められるようになったという点です。これは会社法でいえば取締役や監査役の外部からの招聘が認められるようになるということで、これこそ我が国のマンション管理実務における重要な転換点の一つと位置づけられそうです。
今後マンション内のガバナンスという観点からはあらゆる管理組合において「役員のなり手がいない」「役員に知識や経験が足りない」といった事情にかまけることはできなくなり、適材適所に専門家を活用することが、これまでより頻繁に求められることになりそうです。