標準管理規約改正と第三者管理者方式

このほどマンション標準管理規約(以下「標準管理規約」)が改正されました。改正された個別の内容については、多くの書物やセミナーで解説がなされているものと思いますので、ここではその背景にあるものについて少し考えてみたいと思います。

今回の改正作業は当初の予定よりもやや遅れてしまったというのが事実なのでしょうが、それにもかかわらず改正版を見てみると意外に改正点が少なくて拍子抜けしたという方々は少なくないと思います。私もそのような者の一人です。特に、パブリックコメントとして標準管理規約内に第三者管理者方式のアウトラインを盛り込んで整備して欲しいといった内容の意見はあれほど多かったにもかかわらず、同方式への対応について今般の改正においては事実上棚上げとなってしまいました。こうした経緯について、規約見直し委員会委員の戎正晴弁護士(明治学院大学大学院教授)が示唆に富む解説を行っています(参考文献1)。標準管理規約にて第三者管理者方式についての規定を整備することは、労力と時間とを要する作業であることはもちろんのこと、それを超えて標準管理規約の「標準」の意味について本質的な問いを提起することになるというのです。

そもそも我が国では、欧米と異なり鉄筋コンクリート造の共同住宅が普及し始めたのは1950年代後半以降で、そのメンテナンスを含んだ技術や管理に関わる人材など管理に関する条件が歴史的に育っていない状態で、マンションが大量に建設・分譲されることになり、マンション分譲会社が系列会社の管理会社を作り、そこに全面的に管理業務を委託させる形態が一般的となったのです。一方で、管理組合による管理形態は、管理者に強力かつ集中的な権限を与える管理者方式(ドイツやフランスの方式)ではなく、(名目的には理事長が管理者とされていても)事実上理事会で集団的管理を行ってゆく理事会方式(アメリカの方式)が取られることが一般的です。それにもかかわらず、我が国では区分所有法上は管理者制度が導入され、この点アメリカとは異なっているのです(参考文献2)。そして、標準管理規約は、区分所有法に規定された管理者制度を活かすような内容にすることができず、どちらかというと我が国のマンション管理の実態にいわば追随する形での制定を余儀なくされたという事情があります。

このような我が国におけるマンション管理の実態を考慮するとき、管理者制度の規定自体我が国ではまだまだ十分受容されておらず、管理組合側にも第三者管理者制度の導入については木に竹を接ぐようなイメージがまだありありと生き残っているのだと思います。

しかし、今後多くのマンションにおける管理の現場の活性化に当たっては、管理組合法人制度の活用、専門家役員制度の導入、そして第三者管理者制度の導入が大きな役割を果たすことはほぼ疑う余地のないものといえます。こうした各制度の合理性と必要性とがにわかに認識されつつある現状を考慮するとき、当然標準管理規約はそのそれぞれに対応するために今後大きな変革を余儀なくされるでしょうし、その過程で「標準」の意味も今後大きく様変わりしてゆくこととなるでしょう。いずれにしても今回の小幅にとどまった改正は、上記のような各制度に対応した大幅な改正をにらんだ議論の必要性が待ったなしであるということを、かえって浮き彫りにしているような気がしてなりません。

 

参考文献1 マンション管理新聞(マンション管理新聞社)853号6~7頁

参考文献2 これからのマンションと法(日本評論社)丸山英気・折田泰宏編308~327頁

(神奈川県マンション管理士会会報平成23年11月号より転載)

 

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