「マンション住居部分の事務所使用は管理費倍額」東京高裁は無効と判断

「管理組合は区分所有者が所有する住居部分を他の用途に使用した場合、その区分所有者に対し管理費の増額を理事会の決議により請求することができる」という管理規約の有効性の有無が争われた裁判で、東京高等裁判所が規約の無効を言い渡した一審判決を概ね支持し、このような理事会決定による「倍額ルール」は区分所有者間の利害の衡平を定めた区分所有法30条3項に違反し無効であると判断しました。

1985年築の本マンションでは当初からこのような管理規約の規定が設けられており、理事会はこの管理規約に基づいて事務所使用の区分所有者に対する管理費を通常の倍額と決議し、総会の承認も得ていました。

ところが、その半年後、ある区分所有者がこのマンションを購入して事務所使用を開始。その後管理費を滞納したところから管理組合とのトラブルに発展したようです。

具体的には、区分所有者が当該管理規約の規定や理事会の定めた「倍額ルール」は区分所有法30条3項に違反して無効であり、当該ルールに基づいて既に支払った管理費の一部返還を請求したのです。

一審は、事務所使用は店舗使用と異なり共用部分の使用頻度も住居使用と大きく異なることはないなどと判断し、管理規約の規定自体が無効であると判断しました。

一方、控訴審では、同じく「店舗等として利用されているわけではなく、不特定多数の者が頻繁に来訪するとは考えにくい」ので「共用部分の使用頻度が居住用物件より高いとはいえない」との理由づけで、理事会の「倍額ルール」は無効であると判断しました。もっとも、管理規約の規定自体については区分所有法30条3項が「規約を定めるに当たって考慮すべき事情の一つとして使用目的や利用状況を挙げている」とし「規約に基づく理事会決議による具体的な管理費の増額内容の有効性が問題になることはあっても、規約そのものが無効であるとはいえない」と判断し、この点で一審の判断を変更しました。

本件判例から読み取れることとしては

(1)居住部分の事務所使用については、裁判所は必ずしも共用部分の使用頻度などの点では本来の居住目的の使用との間で差異を認めないことがある、

(2)高裁判決の論理に従うと、管理規約の有効性自体は否定されないため、「倍額ルール」も増額幅を縮小すれば有効と認められる可能性もある(「1.1倍ルール」など)、

(3)判決の事実認定をよく読むと「倍額ルール」の管理組合内での周知に問題があったと認定されたケースであり、やはり管理規約や理事会・総会決議事項についての管理組合内での周知徹底が手続面においては極めて重要といえる、

などが挙げられると思われます。

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