マンションにおけるペット飼育問題②

今回も引き続きマンションにおけるペット飼育の禁止について考えてみましょう。

管理規約により犬猫の飼育が禁止されている場合に、これに違反して犬猫を飼育する区分所有者に対してその飼育禁止を求めることができるのでしょうか?改めて考えてみたいと思います。

ペットは、ペットの飼い主の区分所有者にとっては、家族同然の非常に大切な存在です。一方で、他の区分所有者に対しては、ペット飼育に起因する鳴き声や臭い、抜け毛に対するアレルギーなどにより、平穏な生活環境に悪影響を与えることがあります。
こうしたことから、他の区分所有者からはペット飼育の禁止を目的として管理規約の変更が求められたり、ペット飼育禁止規定の違反者に対する差止請求等の措置が採られることがあります。

 まず、管理規約にペット禁止条項を定めることは有効でしょうか?
この点、管理規約によりペット飼育を禁止することは、判例上も有効と認められています(平成10年3月26日最高裁判決)。
また、たとえ管理規約にペット飼育禁止条項が存在しなくても、ペット飼育に起因してマンションに著しい汚損が発生する等の具体的被害が存在する場合には、当該ペット飼育行為が共同利益違反にあたるとして、差止請求をすることができます(区分所有法57条1項)。

もっとも、ペット飼育禁止条項を管理規約に新たに盛り込むことが、従前からペットの飼育を行ってきた区分所有者にとって「特別の影響」(区分所有法31条1項)を与えるものである場合には、事前に当該区分所有者の承諾を得る必要があり、規約の改定が事実上困難になります。
それでは、ペット飼育禁止条項の創設が「特別の影響」を及ぼすものといえるのでしょうか?
この点、東京高判平成6年8月4日では「動物である以上は、その行動、生態、習性などが外の入居者に対し不快感を招くなどの影響を及ぼすおそれがあること等の事情を考慮すれば、動物飼育の全面禁止の原則を規定しておいて、例外的措置については、管理組合総会の議決により個別的に対応することは、合理的な対処の方法」であるとされ、動物飼育禁止規定について、特段の事情がない限り、「特別の影響」を与えるものではないと判示されました。
この裁判例は、前述の「特段の事情」について「飼い主の身体的障害を補充する意味を持つ盲導犬のように、その動物の存在が飼い主の日常生活・生存にとって不可欠な意味を有する特段の事情がある場合には、動物の飼育を禁止することは、飼い主の生活・生存自体を制約することに帰するものであって、その権利に特別の影響を及ぼすものというべきであろう。」との例示をしており、参考になります。盲導犬や聴導犬を管理規約で排除することは法律上できないと考えるべきでしょう。

では、管理規約によって一般的・抽象的に犬猫の飼育が禁止されている場合において、たとえば小型犬は具体的に迷惑をかけるおそれがないなどとして、その飼育が許容されることがありうるのでしょうか。管理規約違反の判断にあたって、迷惑行為の具体性が要求されるかが問題になります。
この点、管理規約ないしこれに基づく使用細則に基づき、マンション内における犬の飼育の差止めを求めた事案が参考になります(東京地判平成23年12月16日)。この事案では、「他の区分所有者に、迷惑又は危害を及ぼすような動物(犬、猫、猿等)を飼育すること」とのペット飼育禁止に関する細則が存在しました。これにつき、違反区分所有者である被告からは、「飼育している犬は体長30センチないし40センチ,体重5キロないし7キロの小さなシーズー犬3匹であって人に危害を加えるおそれもないことなどから,本件マンションの使用細則で飼育が禁止されている犬には該当しない旨」の反論がなされました。
このような被告の反論に対して、裁判所は「一般的・抽象的に他の区分所有者に迷惑又は危害を及ぼす動物として犬,猫,猿を列挙しているものであり,特に猛犬などに限定している趣旨とは解されないし,実際,ある特定の犬,猫等が他の区分所有者に迷惑又は危害を及ぼすかどうかを個別具体的に判断することは困難であり,それによってマンションの住民間で紛争を生ずるおそれもあることから,上記使用細則を被告主張のように解することは相当でない」と判示して、排斥しました。
以上から、ペット飼育の管理規約違反の判断にあたり、飼育禁止を猛犬等に限定する趣旨の明確な記載がない限り、小型犬、犬の種類、大きさ、頭数等の迷惑行為の具体性は要求されない、と解釈することができます。

(つづく)

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