役員の選任及び解任について管理規約上総会決議が必要とされている。理事長職を理事会で解任することは許されるか

理事長を建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)に定める管理者とし、役員である理事に理事長を含むものとした場合、役員の選任及び解任について総会の決議を得なければならない旨の定めがある規約を有するマンション管理組合において、理事の互選により選任された理事長を理事の過半数の一致による理事会決議のみで解任することは可能でしょうか。

このほどこの点を争点とした判決が最高裁判所で下されました(平成29年12月18日付判決。第一審判決は平成28年3月29日福岡地方裁判所久留米支部判決、第二審判決は平成28年10月4日付福岡高等裁判所判決)。

本事件では、まず第一審の福岡地方裁判所久留米支部の判決は、解任されたY理事長は区分所有法における管理者にあたり、区分所有法に定める管理者の解任は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によるべきものである(区分所有法25条1項)と判示しました。また、Yが辞任の意向を示していれば格別、そうでない限り理事会決議での理事長職の解任には管理規約上明文の根拠を要するとしましたが、そのような根拠規定は管理規約上は見当たらないとして、総会決議によらないY理事長の解任は無効であると判示しました。

次に、原審(福岡高等裁判所での第二審判決)は、第一審判決と同様の理論に加え、管理規約は理事長が理事による互選により選任されると規定しているものの理事長の解任には触れていない点を取り上げ、管理規約上は役員の選任と解任とが明確に区別されていることは明らかであるとして理事会によるY理事長の理事長職の解任は無効であると判断し、第一審判決を維持しました。

ところが、最高裁は、管理規約は理事長が理事による互選により選任されると規定している点を再度取り上げつつも、このような定めは、「理事の過半数の一致により理事長の職を解き、別の理事を理事長に定めることも総会で選任された理事に委ねる趣旨と解するのが、本件規約を定めた区分所有者の合理的意思に合致するというべきであであ」るとして、「上記・・・のような定めがある規約を有する管理組合においては、理事の互選により選任された理事長につき、本件規約・・・に基づいて理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができると解するのが相当である」と判示し、理事会の過半数の決議で理事長職を解くことは可能との判断を示し、事件をさらに審理させるべく、原審へと差し戻しました。

第一審・原審と最高裁の判断とが割れたことからもわかるように、理事長職の理事会の過半数決議での解任の可否については、これまで実務が揺れ動きモデルとすべき管理規約の内容も固まらないところでした。本最高裁判例が出たことをきっかけとして、管理規約の実務も適宜改められてゆくことと思われます。
また、本判例の影響は、その射程がマンション管理組合実務だけでなく会社や社団の役員の専任・解任の実務にも及ぶと思われ、その影響のほどが注目されます。

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